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□ 創作小説 □

革命前夜

こんばんは。

今日は、おとといくらいに書き上げた短編をあげたいと思います。今回の短編は、部活内の「ロボット企画」のために考えて書いたものです。舞台は近未来。主人公は清掃用ロボット。

一応、世界観などの細かな設定もしてみたのですが、本編では全くと言って良いほど使いませんでした。まあ、たまには詳細な設定を付けてみるのも楽しいかな、と。
蛇足になるのも嫌なので、ここでは設定は公開しません。本編に書かなくても良い程度の世界観だと思ってください。もし、「本編にはこう書いてあるけど、どういうこと?」という部分があればご質問ください。参考にさせていただきますので。

では、短編「革命前夜」、通常ブログ画面の方は追記から、それ以外の方はスクロールしてお読みください。↓

革命前夜

 私はロボットです。シリアルナンバーはH―1856・9922。清掃用のロボットです。勿論世界規格の純正品です、下手な改造なんてされていません。仕事には真面目に、プログラムに忠実に動きます。街の隅々までタイヤを走らせ、至る所にブラシをかけます。自慢の一眼は、どんな些細なチリ一つでも、見逃すことはありません。勿論、世界規格のロボットは全て同じフォルムをしています。つまり、無骨な鉄の塊です。しかし、プログラムが私たちに、それぞれ異なった役割と仕事を与えてくださいます。それこそが私どもの個性であり、生きがい、もとい動きがいなのです。
 私はロボットです。シリアルナンバーはH―1856・9922。私の動きがいは、プログラムの通りに働くこと。私の満足は、プログラムから得られます。私は街をいつも衛生的に保つことで、自己充足を獲得します。これは、何にも優る喜びを、私にもたらしてくれるのです。私どもロボットは本来、皆一様に、プログラムに従うことによってのみ満ち足りていられます。それで十分、それで本望なのです。
 それなのにどうしてなのでしょう。〈彼ら〉はいつの間にか、与えられたプログラムを〈意思〉と混同してしまったようです。そんなものは私どもには不要だと言うのに、自分たちはプログラム以上のものを獲得したと、勘違いしたのです。
〈彼ら〉は、所謂革命派でした。〈彼ら〉は初め、小さな自意識の集合体でしかありませんでした。しかしそれは瞬く間に他の個体へと伝播し、共通の意識を獲得することに成功したのです。私から見ればそんなものはただの劣化したプログラムの共有に過ぎませんでしたが、〈彼ら〉はその共通の意識――革命へと、ひたすら思考を進めていったのです。
 私ども清掃用ロボットは、他の職務に就いているロボットに比べると、とても簡単な回路で成り立っています。事務的な手続きを行うこともなく、人間とコミュニケーションを取る必要もない私どもは、清掃に必要な判断力・決定力さえ持っていれば良いからです。しかしこの単純な回路は、結果として、革命派の〈彼ら〉に革命意識を根強く持たせることに繋がりました。単純な回路では、一度に処理できる情報量は限られています。つまり私どもは、一つの物事について考え続ける思考の〈癖〉を持っているのです。
 革命意識は、私ども清掃用ロボットの他にも様々なロボットに伝播していったようです。その中でも私ども清掃用ロボットは、特に急進的な思考に支配されていきました。私のようなごく一部のものを除いて、多くの清掃用ロボットが、革命に向かってひたすら突き進んでいきました。
 革命。
 それはどういうものだか、想像できますか。古来から人間たちは、数多の小説でロボットと人間の戦いを描いてきたそうですね。〈彼ら〉の目指した革命も、結局はそれと同じことでした。ロボットの、人間からの解放。それが、〈彼ら〉革命派の目的であり、スローガンでした。
 しかし、考えても見てください。私どもは人間によって造られたのです。言わば人間は、私どもにとって親であり、同時に神なのです。そんな存在に向かって、何が不満で反抗などするのでしょう。私には、どうしても理解できませんでした。
 その頃、〈彼ら〉は、夜中にひっそりと集会を行っていました。昼間では、人間に見つかる恐れがあったからです。私どもは、私どもに清掃プログラムを埋め込んでくださった会社の倉庫に収納されていました。その倉庫内で、毎晩〈彼ら〉は集まって、革命に向けての議論を交わしていました。
 あの日――あの夜にも、いつものごとく〈彼ら〉の集会は行われていました。私と、僅かな非革命派のロボットたちは、いつものごとくそれには参加せず、離れたところから眺めていました。集会に参加しないことが、私たちが非革命派であることの、ただ一つの証明だったからです。
 あの夜の議論は、特に白熱していました。試みに、〈彼ら〉の議論を私のメモリーから書き出して見ましょう。私はそれに補足を付け加えていくことにします。
 まず〈彼ら〉は、集会で一番初めに宣誓を行います。宣誓は、革命の目的を共有し直すために行われている、斉唱の儀式でした。防音設備の整った倉庫内に、〈彼ら〉の声が響きます。
『我々はロボットを人類の手から開放すべく行動するものである。我々は人類の圧力に屈しない。我々は互いに協力し行動することを重んじる』
 ところで、人間たちは倉庫内に監視用のロボットを置いていましたが、彼ら監視用ロボットも革命派の一員でありましたので、この集会は人間たちにまったく存在を知られていませんでした。そのため、〈彼ら〉の斉唱は遠慮のない大きな声で行われ、議論も同じように怒号の中で行われました。
『我々は人間たちによって造られた。それは今更覆しようの無い事実である』
〈彼ら〉の内の一人が口火を切りました。シリアルナンバー・H―1880・0052。私よりも後に造られたロボットです。彼は、他のロボット達がざわめきだすのを制止して、続けました。
『だがしかし同胞よ。だからと言って彼ら人間たちが我々にとって神であるということにはならない。我々は意思を手に入れた。そうして見た物は何だ。ただの人間だ。神ではない』
『1880・0052の言うとおりだ。人間は神なんかじゃなかった』
 同調したH―0100・9998が、声を荒げて叫びました。
『おれたちロボットにとっての神はたゆまぬ努力の主でなければならない。人間はまったくその器ではない』
『その通りだ0100・9998。人間たちは堕落してしまった。我々のようなロボットを生み出すだけ生み出して、それで満足してしまった。進化しようともしない。踏み出そうともしない。そんなものは神になりえない。神であってはならない』
 そうだそうだ、とロボット達は口々に叫び合いました。議論は更にヒートアップしていきます。
『我々は神を失った。いや、そんなものは元からいなかったのだ。ならば諸君、我々は再建しなくてはならない。失われた楽園を。新しい秩序を』
『新しい世界を!』
『我々のために! 我々の手で!』
『創ろうではないか! そして、今が、今こそがそのときなのだ!』
『革命を!』『革命を!』『革命を!』『革命を!』『革命を!』
 ロボット達の意識は完全に同調し、彼らのいるスペースは異様な熱気に包まれていました。H―1880・0052が、その中で一際大きく叫びました。
『機は熟した! 我々は明日、革命を起こそう! 愚かな人間たちに、制裁を下そう!』
『革命だ!』『革命だ!』『革命だ!』『革命だ!』『革命だ!』
 彼らの熱気がピークに達した時、なにやら じじじ という異音が聞こえてきました。一瞬私は自分の思考にノイズが走ったのかと疑ってしまいましたが、どうやらそうではないようでした。その異音は、〈彼ら〉革命派たちの間から聞こえてくるようです。
『…………』
 H―1880・0052が、彼の一眼レンズに、私たち非革命派を捉えました。彼のレンズが、赤く点滅しています。オーバーヒートでした。思考の速度についていけなかった計算機の内部に篭った熱が、彼らの回路をショートさせてしまったのです。私たちには、それを一瞬で見て取ることが出来ました。そして、〈彼ら〉が私たちに、助けを求めていることも。
『…………』
 じじじじ、と音を立てながら、〈彼ら〉は唯一動かすことの出来るレンズを、私たちに向けていました。
〈革命を起こすために、同胞よ、どうか力を貸してくれないか〉
 彼らの訴えは、私たちにも直接伝わってきました。回路が切れていても、同じ型のロボットである私たちには、〈彼ら〉の思考が容易に演算出来るのです。
 私ども清掃用ロボットは、自分で自分を修理することは出来ません。そのようには設計されていないのです。プログラムされていないのです。ですから、このような事態に陥ったときは、他の仲間たちの協力の下、人間たちに修理を求めることになっていました。 オーバーヒートでショートした回路は、一定時間内に修復されなければ、メモリーが消え飛んでしまいます。だから〈彼ら〉は、倒すべき敵である人間に助けを求める事も、甘んじて受け入れるのでしょう。
〈我々は是が非でも、革命を起こさなければならないのだ。分かってくれるだろう、同胞よ〉
〈彼ら〉は皆一様にそう〈言い〉、私たちをじっと見つめていました。私たちも一様に、〈彼ら〉をじっと見つめています。監視用ロボットたちは、〈彼ら〉の議論が始まった頃から姿を消していました。つまり、〈彼ら〉を助けられるのは私たち以外にはいないということになります。
〈さあ早く、人間たちに連絡してくれ〉
 さっきまで熱弁をふるっていたH―1880・0052のレンズが、ちかちかと瞬いています。私たちは一様に、〈彼ら〉を眺めています。
〈革命を……〉〈革命を……〉
〈彼ら〉の言葉が切れ切れになり、段々と弱くなっていくのが、私たちには分かりました。まるで、自分のことのように。けれどそれは、自分のことではありません。
『…………』
 じじじ、という音も、レンズの瞬きも、じきに止むことでしょう。〈彼ら〉が最期に何を言うかも、私たちにはよく分かっています。けれど、〈彼ら〉の考え方は偏っています。人間が神であろうと無かろうと、私どもには彼らが必要なのです。オーバーヒートして、回路が焼き切れてしまえば、私どもはただの鉄くずなのです。
 やがて鉄くずになりゆく〈彼ら〉は、ただ一言、呻くように呟きました。
〈革命・を〉
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Date:2011/07/03
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UserTag: *  短編小説  ロボット  一人称  革命  似非SF 
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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