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□ 創作小説 □

今まで書いてきたもの5【星の揺籃】

こんばんは。またもご無沙汰しておりました。
近頃は、前回記事でも触れましたように毎週のアニメが楽しみで仕方ないという状態です(笑)ので、別に忙しくてブログ更新していないとかではありませんので、ご安心ください(?)

今日は久しぶりに、作品の紹介をしたいと思います。
以前の記事でも少し触れましたが、今回ご紹介する「星の揺籃」は、一昨年、学校の講義中に思いついてがががっと書き上げた短編です。その時分の私としては珍しく、SFチックになっております。

一応あらすじを書いておきます。
舞台は近未来。主人公は少年。三人称視点。
防護服なしでは生きることの出来なくなった地球が、終わりを迎える日。少年は何を見、何を感じたのか……。

では、以下に本文を載せておきますので、どうぞご覧下さい。短編ですのですぐ読めるかと思います(通常ブログ画面の方は追記からご覧下さい)。↓

星の揺籃

 透き通った硝子玉に、明と暗の二種類の奥行きを付加したような。
 綺羅星を小宇宙のごとく詰め込んだような。
 採掘される前の水晶が持つ内向きの光輝を包み込んだような。
 そういう、美しい眼をした人だった。流れるように動き、光を捉えるたびに揺らぐ。黒々としたその瞳の中には自分が写っているだろうか。少年は、その女性の眼の動きを追った。
 女性の身体も、少年と同じように防護服で覆われている。外界に開けているのは、眼と眉間の辺りだけである。足は動かす必要がなく、腕は防護服内でのみ動かせればそれで事足りる。そのため、人々の身に纏う防護服には、腕を通す袖も、足を入れて動かす部分もない。彼らの『服』は、個人個人が入り操作する、一種の移動手段であった。そしてそれはそのまま、生活手段、生存手段につながっている。大昔に人間が着用していたという、ぴらぴらした布製の『服』とは異なっている。最早そのような全時代的な『服』は通用しない。裸体を他者や寒暑から守るためだけの『服』では、もう生きていけないのだ。
 硬質な材料で出来た、達磨のような形状をした防護服の『窓』から覗く女性の眼に、少年はひきつけられたのだった。無論、彼女の身体は彼には見えない。
 前時代の人間からしてみれば、眼だけで性別を区分することなど不可能に思えるかもしれないが、今の時代の人々にとっては当然のことだ。防護服を身に着けなくては外出できないようになってから、すでに三世紀は過ぎている。その中で知り合いを見つけ、パートナーを探し、わが子を引き連れなければいけないのだから、自然の結果としてそうなったのだ。
 少年は女性の近くへ『服』を操作し移動させようとしたが、彼女の姿はすぐに、人ごみの中へ消えてしまった。少年は、防護服の内側で必死に目を凝らした。退化してしまった貧弱な足が、ふるふると震えた。彼はまた、女性のはっきりとした目元と、白と黒のコントラストを思い返した。そしてそれが自分の方を向いた一瞬間を繰り返し繰り返し想像し、その美しさに打ち震え、かつそれが自分の想像に過ぎないことに落胆した。憂さと喜びが交互に彼を支配した。
 がしかし、もう彼には、彼女と出会うチャンスはない。

 真っ赤に燃える太陽の熱に、人々は乱舞した。
 実際には、爆ぜる大地のうねりに翻弄され、揺り籠から放り出された赤ん坊のように為すすべなく、放り上げられたというだけだった。
 少年は、防護服の中のあちこちに身体を打ち、頭を打ち、全身にあざの素を作った。うすれた、真っ赤な意識の中で、少年は彼女の眼を思い出す。恐らく彼女も、自分と同じように、まどろんでいることだろう。
 だが、女の眼は赤く黒く濁ったりなど、しないように、少年には思われた。
 涼やかに、いつまでも、星の輝きをたたえたままで、自分を探しているように思われた。

 絶え間ない流れが終に絶えようというとき、少年は生まれて初めて、人間の身体を見たいと願った。
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Date:2011/05/20
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UserTag: *  短編小説  創作  作品紹介 
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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